STマイクロエレクトロニクス/野口氏・マッテオ氏

半導体ソリューションとV-Sidoの連携でロボットの可能性を提案
STマイクロエレクトロニクスのデモンストレーション用ロボット

STマイクロエレクトロニクス(以下、ST )は、次世代モバイルを含むIoT機器やスマート・ドライビング向けの半導体ソリューションを開発・提供する世界的なリーダー企業です。スイスのジュネーブに本社を持ち、顧客企業数は10万社以上、2017年通年の純売上は83.5億ドルを記録。一般のユーザーがST製品を直接目にする機会はあまりありませんが、ST製品は身の回りにあるさまざまな電子機器の中に組み込まれて活用されています。そのSTが自社の製品をデモンストレーションするため、2017年、47個のST製品を組み込んだロボットを開発しました。このロボットは「V-Sido」制御のヒューマノイド型ロボット「ROBOTIS OP2」をベースにしており、その開発協力をアスラテックが担当しました。

2017年11月、パシフィコ横浜で開催された「Embedded Technology 2017(以下、ET2017)」(※1)にて初公開となった同ロボットは、ToF測距センサを用いた衝突防止や方向転換、モーション・温度・大気圧の検知、超小型プロジェクタを用いた映像投射などを実演。その後も日本国内だけにとどまらず、国外の展示イベントなどで使用され、活躍の場を広げています。

今回は、「V-Sido」導入に至った理由や、アスラテックとの協業が生むメリット、ロボット開発分野における展望などについて、ST の日本担当 カントリーマネージャーである野口 洋氏、システム・ソリューション技術部 部長のマッテオ マラヴィタ氏(以下、敬称略)に話をお聞きしました。

※1 最新の組み込み技術とソリューションを発信する、国内外最大級の技術展示会。

野口 洋(のぐち・ひろし)

日本担当 カントリーマネージャー

2007年、STマイクロエレクトロニクス株式会社に入社。民生および自動車向けMEMSセンサの技術マーケティングを担当。2011年にアナログ、オーディオ製品や、その他センサ製品を担当領域に加え、2013年よりアナログ・MEMS・センサ製品の国内におけるマーケティング活動を統括。2017年、STの日本における事業を統括する日本担当 カントリーマネージャーに就任。

マッテオ マラヴィタ

システム・ソリューション技術部 部長

2007年、STマイクロエレクトロニクス株式会社に入社。プロセッシング、センシング、無線通信、モータ制御や電源制御技術など、電子機器の主要機能を果たすSTの製品とソフトウェアを組み合わせ、アプリケーション全体の観点から最適なソリューションをクライアントに提案するシステム・ソリューション技術部を統括。

広範な製品群とグローバルなシェアを保有

―― まずは、御社が開発・提供されている製品群についてお聞かせください。

野口:STは、グローバルに展開する半導体サプライヤーです。IoTの分野とスマート・ドライビングに関するアプリケーションについても2年ほど前から重点領域とし、半導体製品を開発・提供しています。IoTの分野では、センシングやプロセッシング、無線通信、モータ制御といったICや、それらをサポートする役割を持つオペアンプ、コンパレーターなどのパワーマネージメント系ICなど。自動車の分野においては、レーダー用ICやセンサ、車載用マイコン、車車間通信用ICなど、“より安全”で“より環境にやさしく”、“よりコネクテッド”な車の実現に貢献する製品を提供しています。

―― デモンストレーション用ロボットには、制御マイコンボードとして「V-Sido CONNECT(ブシドー・コネクト)」をご採用いただいています。こちらにも搭載されているST製のマイコン「STM32」が、グローバルなシェアを得ている理由を教えていただけますか?

マッテオ:ひとつにはSTM32の充実したエコシステムが挙げられると思います。STが提供する多様な開発ボードや包括的ソフトウェア・パッケージ「STM32Cube」に加え、パートナー企業が提供する各種ソリューションなど、ハードウェアとソフトウェアの両面からお客様のシステム開発の効率化が図れる点が、大きなメリットです。また、「Arm® Cortex®-M」を搭載した「STM32」ファミリは、高性能なものから低消費電力を特長とするものまで、10シリーズ700品種以上から構成されています。各シリーズ間におけるピン配置やソフトウェアに互換性を持っており、異なる製品間でも、開発資産をスムーズに移植できることも強みです。

デモンストレーション用ロボットを用い、先進ソリューションを包括的に世界へ提案

―― デモンストレーション用ロボットの開発コンセプトや、ビジョンについてお聞かせください。

野口:STが有する先進的ソリューションで、“ロボットの可能性を切り開く”というのが、開発の大きな目的です。加えて、常に新しいソリューションを搭載していくことで、“成長し続けるロボット”を形にすることをコンセプトとして掲げています。これらのビジョンとコンセプトを軸とし、さまざまな技術を組み込むことで、多様なフィールドで活躍するロボットに向けたST製品の魅力や可能性を実感していただければ幸いです。

―― 今回のロボットには、どのような製品が組み込まれているのでしょうか?

マッテオ:広範なセンシングに通信技術、マイコンを用いたプロセッシング技術などを組み込みました。具体的には、体勢を検出するモーション・センサや電子コンパス、障害物との距離やジェスチャ検出が可能なToF測距センサ、環境情報を取得する大気圧センサおよび温度センサ、MEMSマイクロミラー、MEMSマイクロフォン、外部との通信を行うBluetooth® low energyネットワーク・プロセッサ、演算処理を行う32bitマイコンなどですね。私どもは常に新しい技術を開発しておりますので、将来的にはAI(人工知能)や、情報を一手に集めて処理するクラウド・コネクティビティ技術を組み込んで、より進化させていきたいと考えています。また、外部の情報を処理し、人間とコミュニケーションが図れるかどうかも、重要視しているポイントです。センシングが可能なデバイスと、情報処理に優れたソフトウェアのマッチングにより、今回のソリューションを実現できたと考えています。

―― 「ET2017」でデモンストレーションを行った際は、どのような反響がありましたか?

野口:多くのお客様に関心を持っていただけて幸いでした。STはさまざまな展示会に参加していますが、今回はロボットのおかげで多くの来場者の方に足を止めてもらうことができました。デモンストレーションの時間には、必ず人だかりができていましたね。好意的に受け止めていただけたと認識しています。ロボットに組み込まれた個々の製品をお客様にご紹介する機会を、数多く得られたことも印象に残っています。

―― その後も、展示会やイベントなどでデモンストレーションを行われたのでしょうか?

野口:今年1月、アメリカのラスベガスで開催された「CES 2018」(※2)では、ホテル内にブースを設けてプライベートショーを開催しました。受付の近くにロボットを設置し、ご招待したお客様がいらっしゃったら、デモを開始するという構成です。こちらのショーも好評をいただき、ほぼ休みなくロボットを動かして製品をご紹介させていただく状況でした。ロボットとお客様の距離が近かったこともあり、よりコミュニケーションを取りやすい場づくりができたと思います。また4月末には、中国の深圳(しんせん)市で行われた2,000人規模のプライベートショーにも展示しました。

※2 最先端のエレクトロニクス技術や製品が一堂に会する、世界最大規模の家電見本市。今年は、世界各国から3,900以上の企業団体が出展。

アスラテックとの協業によって、センシングや画像投影機能へ開発リソースを集中可能に

―― アスラテックをロボット開発パートナーにお選びいただいた理由について、お聞かせください。

マッテオ:デモンストレーション用ロボットを開発するにあたり、複数の開発パートナーから検討を行いました。その中で、アスラテック様にご協力をお願いした理由は、主に3つあります。1つは、エンジニアの技術レベルが非常に高い点です。ロボットはさまざまな要素技術の結晶なので、開発には幅広い技術・知識が要求されます。動作制御に限らず、センサやクラウドへのコネクションといった技術・知識を、全て高度なレベルで把握されているところに、強く魅力を感じました。また、ソフトウェアはもちろん、ハードウェアから機体のデザインに至るまで、ロボットをトータルプロデュースする経験・スキルをお持ちだったことも、決め手の1つです。3つ目には、細かな要求に基づくカスタム・ソリューションを実現できる、高い柔軟性が挙げられます。STはロボット開発のノウハウをあまり持ち合わせていなかったので、機体の重量から組み込み可能な製品数、機体のバランス制御など、さまざまな疑問や問題をご相談させていただきました。これら全てを短期間で解決していただけたことや、非常に協調的な姿勢が強く印象に残っています。

―― 「V-Sido」導入により、実感したメリットはございますか?

マッテオ:非常にスムーズで正確な動きに加え、新たな設計に適用したり、動きを加えたりする際、チューニングが少なくて済む点です。今回の開発は時間が限られた中での作業でしたが、「V-Sido」を採用したことで、ロボットの動作に関する課題をすぐにクリアできたことに感謝しています。おかげで、センシングや画像投影などの機能に、開発リソースを集中できました。また、我々は「V-Sido」がさまざまな異なるロボットで実績がある点を評価しています。さらに、できるだけ多くのST製品をロボットに搭載するという目的があったので、「V-Sido CONNECT」のマイコンに「STM32」が使われていたことも魅力的でした。

―― ロボット開発の分野において、今後はどのようなアプローチをお考えですか?

野口:ロボットは、工場や住宅、ヘルスケア、教育など、さまざまな分野での活躍が見込まれています。その中でも、STは産業分野を重要なターゲット市場として位置付けており、工場における生産ラインをインテリジェント化するロボットなどにも、業界でも有数の幅広い製品ポートフォリオを生かして、積極的に製品アピールをしたいと考えています。単体でのアプローチではなく、センシングやコネクティビティ、プロセッシングなどの製品を組み合わせ、ロボットの包括的プラットフォームとしてお客様へのご提案ができればと思います。

―― アスラテックに期待することや、連携を強めていきたい分野についてお聞かせください。

野口:先ほどお話しした通り、デモンストレーション用ロボットにおけるコンセプトの1つは、“成長し続けるロボット”を形にすることです。AIやクラウド・コネクティビティ、オーディオ・プロセッシングなど、さまざまな新機能を組み込んでいきたいと思います。デモンストレーション用ロボットのさらなる“成長”へ向けて、技術的な面からプロデュースまで、引き続きご協力いただけると幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。

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