株式会社ロボティズ/柴田 善広氏

世界標準アクチュエータ「DYNAMIXEL」と
V-Sidoでロボットの研究開発を加速

2017年11月、株式会社ロボティズ(ROBOTIS Co.,Ltd.)(以下、ロボティズ)のアクチュエータ「DYNAMIXEL(ダイナミクセル) MX-28」を採用したヒューマノイド型ロボット「ROBOTIS OP2(ロボティズ・オーピーツー)」に、当社の「V-Sido」が正式対応しました。「DYNAMIXEL」シリーズは、世界各国の大学や研究機関などでロボット開発に使われるロボット用アクチュエータのデファクトスタンダードで、「ROBOTIS OP2」も研究・教育用プラットフォームとして世界で利用されています。

「DYNAMIXEL」や「ROBOTIS OP2」に「V-Sido」が対応することにより、ロボット研究やロボット開発において、どのようなメリットが生まれてくるのか──今回は「DYNAMIXEL」シリーズの特長や、「V-Sido」対応によるメリットなどについて、ロボティズの日本支店長である柴田 善広氏(以下、敬称略)にお話を伺いました。

柴田 善広(しばた・よしひろ)

株式会社ロボティズ 日本支店長

東京都立工業高等専門学校(現・東京都立産業技術高等専門学校 品川キャンパス)卒。学生時代からロボット競技の世界に魅せられ、メカ設計や製作技術を習得。金型メーカー、ホビーロボットメーカー、ロボット開発会社勤務を経て、2015年にビザを取得して韓国へ。ROBOTIS入社後、エンジニアとしてオープンソースのロボット開発に従事し、2016年に日本支店となる株式会社ロボティズを設立。オープンソースと3Dプリンターをキーワードに、用途や好みに合わせてロボットを開発できる世の中を目指す。

「DYNAMIXEL」シリーズが世界中で用いられる理由とは

―― まずは、御社の歴史や製造・販売されている製品についてお聞かせください。

ROBOTIS社は1999年に韓国で設立し、自律走行するロボット玩具の製造・販売からスタートしました。2000年代に入ってからは、韓国政府が知能ロボット分野に関する特別法を整備し、国を挙げてサービスロボットの開発を推進するようになり、その過程でロボット用アクチュエータの開発に着手したのです。その後、韓国だけでなくアメリカや中国にも拠点を広げ、200超の代理店を通じてグローバルに販路を拡大し、主に研究用としてアクチュエータの世界的なシェアを得ることとなりました。2016年11月、東京にも支店を設立し、日本企業との協業を通じて、さらなる事業の拡大を進めています。現在は、子ども向けの教育用ロボットキットから、オープンプラットフォームのロボットまで幅広く展開しています。

―― ロボット研究におけるデファクトスタンダードとなった「DYNAMIXEL」シリーズ。その特長についてご教示いただけますか?

「DYNAMIXEL」は、生活支援やデモンストレーションなど、多種多様なタスクをこなすロボットの構成要素であり、ベースとなるアクチュエータです。モーターやギアボックス、エンコーダー(センサー)に加え、モーターの動作やパソコンとの通信を司る各種基盤などを、1つのケースに内蔵しています。さらに、ロボットを動かすのに充分なトルクや回転スピードなどのスペックを保持しつつ、高い耐久性と省サイズ化を両立。細かなパーツの選定にも妥協せず、優れたトータルバランスを実現しました。

―― 一般的なサーボモーターとの違いは何ですか?

一般的なサーボモーターは、コントローラーの信号を受け取って動作します。それに対し、弊社のアクチュエータはマイコンを内蔵しており、エンコーダーの位置情報をコントローラーに送ることが可能です。コントローラーと双方向での通信が可能となるので、ティーチング(教示)にも対応します。例えば、人間がロボットの関節を動かし、その動作を再現することも可能です。「V-Sido」を用いて2体のロボットを同期させれば、動作を互いにトレースさせることも難しくありません。

―― 業界で世界的シェアを得ている理由や、評価されている点についてお聞かせください。

ロボットを製作するにあたり、“どこから手掛けるか”という問題がありますよね。日本の研究者はハードウェア製作にも長けている方が多いですが、そこから始めてしまうと、本来の研究に割ける時間やコストが削られてしまうのです。そこで、アクチュエータのコンポーネントとして「DYNAMIXEL」を導入すれば、ハードウェア開発にかかる時間を省略できます。これが、世界的シェアを得るに至った理由の1つです。実例として、「DARPA Robotics Challenge(ダーパ・ロボティクス・チャレンジ)」(※1)本選では、日独米伊韓の各国から計25チームが参加しましたが、そのうち1/4のチームで、「DYNAMIXEL」や「THORMANG2(トールマン・ツー)」(※2)が採用されました。F1で例えるなら、エンジンや車体を開発者に提供する“ベンダー”的な役割を果たしているのが弊社です。

※1アメリカ国防総省の機関である国防高等研究計画局(DARPA)が主催した、災害救助用ロボット競技大会。自然災害や人的災害における、人間が作業することの難しい環境で活動するロボット開発を促すのが目的。

※2 ROBOTIS社製の等身大ヒューマノイドプラットフォーム。最新機は、身長137.5cm、体重42kgの「THORMANG3」。

ユーザーの利便性を第一に、ソフトウェアをオープンソース化

―― 「ROBOTIS OP」シリーズ開発の経緯や、それを通じて目指すビジョンはなんでしょうか?

「ROBOTIS OP」シリーズの礎は、米国立科学財団 (NSF)による支援のもと、バージニア工科大学やペンシルバニア大学と共同開発した「DARwIn-OP(ダーウィン・オーピー)」です。こちらは、設計データからオープンプラットフォームのロボット開発を目指すプロジェクト。アクチュエータ提供とハードウェア製造を、弊社が担当しました。“OP”は“オープンソース”の略称で、各部品のCADデータや組立て説明書なども無料配布の対象です。このコンセプトは、先端の演算能力や高トルク出力を備える「ROBOTIS OP2」にも引き継がれています。ハードウェアやソフトウェアを変更でき、研究目的に応じてフレキシブルな対応が可能。オープンソースで公開しているモーションプログラムを用いれば、誰でもすぐに動かせる点もメリットです。製品の使い方をユーザーに示す“How to use”的な部分も、オープンソースのプログラムが担っています。

今後は、人工知能分野やIoT分野における活用に期待

―― 2017年11月に「V-Sido」が「ROBOTIS OP2」に正式対応しました。「V-Sido」対応により、実感したメリットはなんでしょうか?

弊社が開発するロボットの中核を成すのはアクチュエータです。「ROBOTIS OP2」に限らず、「DYNAMIXEL」搭載プラットフォームを「V-Sido」で制御可能になったことに、大きな意味を感じています。これにより、小さなロボットで開発したソフトウェアリソースを、大きなロボットへ移植する工程が以前よりスムーズになりました。ロボット研究の現場で、「ROBOTIS OP2」を利用していただく機会が増えていることにも感謝しています。

―― ロボット研究の現場から、「V-Sido」のメリットが伝えられることはありますか?「ROBOTIS OP2」を研究用に提供された事例とあわせてご教示ください。

沖縄科学技術大学院大学(OIST)における、認知のメカニズム理解を目的とする研究。弊社が「ROBOTIS OP2」を提供したこちらの事例では、逆運動学(IK)計算により姿勢を制御する機能が、研究上最大のメリットだと聞いています。「ROBOTIS OP2」は多関節のロボットなので、歩かせたり踊らせたりするには、プログラミングのノウハウが必要です。しかし「V-Sido」を用いて制御すれば、各関節から個別に情報を共有せずとも、適切な重心の位置を知らせるだけで、個々のモーターに指令を送って姿勢を制御できるのです。また、この研究ではAI(人工知能)を駆使して動作を自動生成し、ロボットにダンスをさせています。これを実現するために、ロボットとAIの橋渡しを実現しているのが「V-Sido」なのです。人間の体で例えると、動きを制御する小脳や脳幹のような役割を担っています。

―― 世界的半導体メーカーSTマイクロエレクトロニクス社(以下、ST)が開発した、デモンストレーション用ロボット(※3)も「V-Sido」制御の「ROBOTIS OP2」がベースになっていますよね?

STさんの製品群をたくさん組み込んだロボットを作り、そのロボットでSTさんの製品のデモンストレーションを行うというもので、まさに“歩くショーケース”ですね。そうしたロボットのベースとして「ROBOTIS OP2」をご採用いただいたのは、プレーンなプラットフォームであり、多種多様な製品群などを組み込むのに適していたからだと思います。STさんの製品群の組み込みや動作確認などは全面的にアスラテックさんにご協力いただきました。「V-Sido」を採用した「ROBOTIS OP2」の活用事例として、AI分野においてはOISTの認知メカニズム研究が、IoT分野においてはSTさんのデモンストレーション用ロボットが代表例といえます。

※3 2017年11月、パシフィコ横浜で開催された「Embedded Technology 2017」にて初公開となった同ロボットはToF測距センサを用いた衝突防止や方向転換、モーション・温度・大気圧の検知、超小型プロジェクタを用いた映像投射などを実演。その後も日本国内だけにとどまらず、国外の展示イベントなどで使用され、活躍の場を広げています。

―― アスラテックに期待することや、「V-Sido 」との連携を強めていきたい分野についての想定はありますか?

弊社がハードウェアを提供しているのに対し、アスラテックさんはソフトウェアを提供されている企業です。そこで、お互いの製品を組み合わせて開発を行えば、今後もより良いものを生み出せると考えています。まずは「ROBOTIS OP 3」を筆頭に、対応プラットフォームを増やしていきたいですね。また、弊社のアクチュエータを利用したハードウェアを受託開発するにあたり、「V-Sido」をコントロールシステムに採用させていただければと思います。特に、人工知能やIoT分野に関してニーズが発生しているので、その面でも連携を強め、新規製品を開発していきたいです。

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