株式会社富士建/角 和樹氏 インタビュー

震災復興支援への想いをV-Sido OSで実現した
DOKA ROBOシリーズ

汎用建設機械の運転席に設置することで、遠隔操縦を可能とする双腕双脚の人型ロボット「DOKA ROBO(ドカロボ)」シリーズ。災害時の危険地域といった立ち入りが困難な場所で遠隔作業や、一般的な工事現場への対応を目的に、特殊土木作業を専門とする株式会社富士建が開発を手掛けています。

同シリーズは、2014年に誕生した初号機「DOKA ROBO」から、当社のV-Sido OSを制御装置の基本ソフトウェアとして採用。V-Sido OSにより、ジョイスティックを利用したロボット操縦に加え、操縦者の頭の動きに追従させたカメラの方向制御や、特定小型電力無線/無線LANを通じた遠隔操作など、さまざまな形での操縦を実現しています。V-Sido OS導入に至った経緯や、それにより得られた効果、今後の展望などについて、全シリーズの開発を担当している、株式会社富士建 専務取締役・ロボット開発の角 和樹氏に話をお聞きしました。

角 和樹(すみ・かずき)

株式会社富士建 専務取締役

1958年佐賀県生まれ。1級建築士。2006年より、個人でロボット開発を開始。二足歩行ロボットによる競技大会や格闘技大会に参加し、ロボット製作のノウハウを学ぶ。2008年、5本指機構を備えた女性型ロボットを用いて、楽器演奏や建設機械の操縦を実現。現在は、被災地の復旧や高齢化が進む建設業界のオートメーション化を目指し、DOKA ROBOシリーズの開発を進めている。

被災地復興を目指し、遠隔操作ロボットの開発をスタート

―― まずは、これまでどのようなロボットを開発してきたのかお聞かせください。

私は2006年頃から、個人で二足歩行ロボットの開発をスタートし、「ROBO-ONE(ロボワン)」(※1)などの競技大会に出場していました。当初は小型のものを製作していたのですが、ロボットの実用化を目指す「お手伝いロボットプロジェクト」という競技に参加してからは徐々に、より大きな人間サイズのロボットをどうすれば作れるのかに熱中していきました。その流れで5本指機構を備えた女性型ロボットの開発を始め、これが現在のDOKA ROBOシリーズの前身となりました。

※1 二足歩行ロボットによる格闘技を中心としたロボット競技会。初開催の2002年以降、毎年2回ずつ開催されており、国内で有数のロボット競技会として知られている。

―― ロボットの遠隔操作で、建設機械を動かそうと思ったのはなぜでしょう?

きっかけはやはり、2011年3月の東日本大震災です。建設関係の仕事に従事している私が、被災地域の復興に役立てることを探した結果のアイディア。早速、DOKA ROBOシリーズの前身となる5本指機構のロボットを使って建設機械を試験的に動かしてみたところ、本格的に研究を重ねれば、よりスムーズな遠隔操作が可能になるのではという手ごたえを感じました。

―― 2014年に開発されたDOKA ROBOシリーズ初号機から、アスラテックのV-Sido OSをご採用いただいています。改めて、導入の経緯を教えてください。

トルクの強いサーボモータを搭載することで、ロボット自体の性能は向上しましたが、個人で制御システムを作るのはとても難しい。実は、2008年に等身大サイズのロボットを作り上げてはいたのです。しかし、なかなか稼働までこぎ着けず、ただただ機体を寝かせていました。
転機となったのは、私も取材を受けた「ジャパニーズメイカーズ:日本の『新』モノづくり列伝 小さな作業場から生まれるすごいモノ」(学研教育出版)という書籍。こちらに、V-Sido OSを導入した巨大ロボット「クラタス(KURATAS)」(※2)の記事がありました。そこにソフトウェア開発者として吉崎 航さん(現アスラテック株式会社チーフロボットクリエイター)の名前があり、「この人に頼んでみよう」と連絡したのがきっかけです。2013年、アスラテックさんが設立される直前のタイミングでした。

その後、吉崎さんとディスカッションを重ねて、寝かせていたロボットを調整してもらえないかと依頼しました。そうしてV-Sido OSを導入したこのロボットが、2014年にお披露目した初号機「DOKA ROBO」です。国土交通省がこの年に実施した「次世代社会インフラ用ロボット技術・ロボットシステム(災害応急復旧技術)」(※3)に参加できたのも、アスラテックさんのご協力あってこそでしたね。

※2 水道橋重工が開発した巨大ロボット。全高約4メートル、重量約5トンの機体をV-Sido OSによって制御している。搭乗しての操縦に加え、パソコンやタブレットを利用した遠隔操縦も可能。

※3 「維持管理」及び「災害対応」に役立つロボットの公募を行い、国土交通省の直轄現場で技術の実用性を検証・評価する施策。DOKA ROBOシリーズ初号機と2号機は、2014 年から2015 年にかけて、雲仙普賢岳(長崎県南島原市)で実施された現場検証に参加している。

V-Sido OSの利点を活かして、実機同様の操縦感覚を実現

―― V-Sido OSに対する評価を率直にお聞かせください。

V-Sido OSはアクチュエータの動作をリアルタイムに生成しますが、その反応速度の速さは非常に魅力的です。小さな石を削り取るといった、繊細な操作に対応できるかどうかは、建設機械の操縦にとって必要不可欠なことですからね。また、二足歩行でロボットを稼働しても倒れないのは、リアルタイムかつスピーディーに動きや姿勢を計算し、動作へ反映していることに他なりません。V-Sido OSを使えば、将来的には「自ら歩いて建設機械に乗り込むDOKA ROBO」が生まれるでしょう。

―― 導入により実感した、V-Sido OSならではのメリットはありますか?

実機と同じ操縦装置を導入できたことですね。これはさまざまな入力デバイスに柔軟に対応できるV-Sido OSならではのこと。初号機と2号機は、小さなジョイスティックを使っての操縦でしたが、オペレーターからは不評でした。当然ですが、実機とは操縦感覚が全く異なるという評価だったのです。そこで最新の3号機では、実機と同じ操縦装置をメーカーから購入して、V-Sido OSによる操作が可能なようにしていただきました。実機と同じく、油圧でシリンダーを動かす機構。レバーのフィーリングにも違和感はありません。現場の方々からも好評ですね。

対応する建設機械を増やすことで、ロボットによる協調作業が可能に

―― 最新の3号機を製作するにあたり、改良を加えた点をお聞かせください。

最大の進歩は、機体の関節などに搭載するサーボモータです。防水タイプで高トルクな部品を理想としていましたが、その条件を満たすロボット用サーボはあまり普及していません。吟味を重ね、ロボット用機能部品や電子機器を製造している双葉電子工業の製品を採用しました。

また、ロボットを建設機械に設置し、被災地で運用するには、強度を保ちつつ軽量であることが必要不可欠です。そこで3号機は、総重量を約18kgに抑えながら、フレームを頑丈に設計。それに加え、初号機や2号機の問題点だった無線環境を見直し、特定小電力無線や無線LAN、LTE(移動通信網)などに対応させました。現在は、距離の制限なく遠隔操作可能です。その甲斐もあり、カナモト様によるレンタルが2017年7月からスタートしました。DOKA ROBOシリーズが災害復興の助けになるよう、これからもさまざまな改良を加えていく予定です。

―― DOKA ROBOシリーズの開発にあたって、今後アスラテックに期待することはありますか?

現在、ハードウェア(機体)は弊社、ソフトウェア(OS)はアスラテックさんという切り分けで作業分担しています。とはいえ、弊社だけでは開発時に悩んでしまうこともしばしば。一方、吉崎さん率いるアスラテック開発チームの皆さんは、工学的に正しい機構の実現など、ソフトウェア開発にとどまらず、ロボット全般に対する見識が深い。ハードウェア面でも、これまでさまざまなご相談をさせていただきましたが、今後もご協力いただければと思っています。

―― 今後の展開や、予定しているプロジェクトについてお教えください。

建設業界は高齢化が進んでおり、先々後継者がいなくなるのではという不安を抱えています。そもそも、現在すでに人手不足の状況です。今後、この業界でロボット化が進むのは間違いありません。

現在、DOKA ROBO シリーズが対応しているのはバックホウ(油圧ショベル)のみですが、将来的にはブルドーザーや転圧機、タイヤローラーなど、さまざまな建設機械を動かせるようにしたいと考えています。対応する建設機械が増えれば、「土を掘って、キャリーに積んで運び、ローラーでならす」といった具合に、協調作業が可能となるはずです。そうなれば、ゆくゆくは、ディープラーニングで自ら作業効率を上げ、オートメーション化するAI(人工知能)搭載型の建設用ロボットも生まれるでしょう。そこで重要になるのは、やはりソフトウェア。この面でも、アスラテックさんには期待しています。

写真左から、株式会社カナモト・吉田様/アスラテック株式会社・吉崎/アスラテック株式会社・田中/株式会社富士建・角様。

お問い合わせ

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